ビールの酵母の種類とは?エール酵母・ラガー酵母・野生酵母の違いを整理【03-6】

エール酵母・ラガー酵母・野生酵母の違いを示したイメージ

ビールの味や香りを決める要素として、ホップやモルトに加えて欠かせないのが「酵母」です。

前回の記事(ビールの酵母とは何か?役割・発酵との関係・香りへの影響を解説【03-5】)では、酵母とは何か、発酵や香りとの関係について整理しました。

この記事ではさらに一歩進んで、

・ビールに使われる酵母の種類
・それぞれの特徴
・味や香りへの影響

といった観点から、酵母の違いを整理していきます。

ビールの「なんとなくの違い」を、もう少し構造的に理解するための土台になる内容です。

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エール酵母

エール酵母とは

エール酵母は、比較的高い温度で発酵する酵母で、ビールの中でも「エールビール」に使われる酵母です。

発酵の過程で液面付近に集まりやすい性質があるため、上面発酵酵母とも呼ばれます。

特徴

エール酵母の特徴としては、

・発酵温度が高め(一般的に15〜25℃程度)
・発酵が比較的速い
・香り成分を多く生み出す

といった点が挙げられます。

味や香りへの影響

エール酵母は、香りの豊かさに大きく関わります。

代表的な特徴としては、

・フルーティー(リンゴ、バナナ、柑橘など)
・華やか
・複雑

といった香りが生まれやすい傾向があります。

バリエーションの存在

エール酵母と一言で言っても、その中にはさまざまな種類があります。

例えば、

・ヴァイツェン酵母(バナナ・クローブの香り)
・セゾン酵母(スパイシーでドライ)
・ベルジャン酵母(複雑で個性的)

など、同じエール酵母でも、性質や香りは大きく異なります。

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ラガー酵母

ラガー酵母とは

ラガー酵母は、低い温度で発酵する酵母で、「ラガービール」に使われる酵母です。

発酵の過程で液体の下の方に沈む性質があるため、下面発酵酵母と呼ばれます。

特徴

ラガー酵母の特徴としては、

・発酵温度が低め(一般的に5〜15℃程度)
・発酵がゆっくり進む
・雑味が出にくい

といった点があります。

味や香りへの影響

ラガー酵母は、香りを強く出すというよりも、

・すっきり
・クリーン
・クリア

といった印象を作る役割を持っています。

そのため、

・ホップの苦味
・モルトの旨味

といった他の要素が、よりはっきり感じられる傾向があります。

安定した味わい

ラガービールは、世界的にも主流のスタイルであり、大手ビールの多くがこの酵母を使用しています。

安定した品質と飲みやすさが特徴です。

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野生酵母

野生酵母とは

野生酵母とは、自然環境中に存在する酵母を利用した発酵のことです。

代表的なものとしては、

・ブレタノマイセス

などがあります。

また、酵母だけでなく乳酸菌なども関与する場合があり、複雑な発酵が行われます。

特徴

野生酵母を使ったビールは、

・発酵が不安定になりやすい
・時間がかかる
・個体差が出やすい

といった特徴があります。

一方で、

・独特な香り
・酸味
・複雑な味わい

といった、通常のビールとは異なる魅力を持っています。

味や香りへの影響

野生酵母によるビールは、

・酸味(サワー系)
・野性味のある香り
・熟成による変化

などが特徴的です。

好みは分かれますが、クラフトビールの中では重要なジャンルの一つです。

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ビール酵母の分類

大きな分類とその位置づけ

ビールの酵母は、ざっくりと以下のように整理できます。

・エール酵母
・ラガー酵母
・野生酵母

ただし、これはあくまで大きな分類であり、実際にはその中に多くのバリエーションが存在します。

スタイルと酵母の関係性

整理すると、

・エール/ラガー → 酵母の種類と発酵特性
・スタイル → 原料・製法・歴史を含めた総合的な分類

という関係になります。

つまり、酵母はスタイルを構成する一要素です。

では、実際の作られたビールのスタイルはどのように決めるのか。

あらかじめ決まっているものに当てはめる場合もあれば、造り手が設計した内容に対して「このスタイルに近い」と判断したり、新たに名前を付けたりすることもあります。

つまり、スタイルは固定されたルールで一意に決まるものではなく、複数の要素をもとに、造り手や評価の中で位置づけられていくものです。

そのため、酵母はスタイルを構成する要素の一つであり、それだけでビールのスタイルが決まるわけではありません。

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香り

酵母ごとの香りの違い

酵母によって、香りの方向性は大きく変わります。

エール酵母では、

・フルーティー
・華やか

ラガー酵母では、

・控えめ
・クリーン

野生酵母では、

・酸味を伴う香り
・複雑で個性的

といった違いが現れます。

香りは発酵条件と酵母の状態で変わる

同じ酵母であっても、

・温度
・発酵時間
・環境

によって香りは変化します。

また、発酵温度や時間といった外的な条件だけでなく、酵母そのものの状態によっても変化します。

例えば、

・酵母が元気かどうか(活性)
・どの程度の量が使われているか
・何世代目の酵母か

といった要素によって、発酵の進み方や生成される香り成分は変わります。

そのため、同じ酵母を使っていても、条件や状態によって、仕上がるビールの味わいや香りは異なります。

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実際に飲んだときの感じ方

酵母の違いを感じるポイント

ビールを飲むときは、まず「香り」に注目してみるのがおすすめです。

・フルーツのような香りがするか
・すっきりしているか
・酸味や独特な香りがあるか

といった違いを意識することで、酵母の影響を感じやすくなります。

飲み比べで理解する

理解を深めるには、飲み比べが有効です。

・エールビールとラガービールを比べる
・サワービールと通常のビールを比べる

といった形で比較すると、違いがより明確になります。

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ビール好きとして思うこと

ビール好きとして思うこと

大手ビールは、いい意味で、どこでどのように飲んでも、安定した状態で味わうことができます。
これは、酵母の管理や発酵条件、製造工程が高いレベルでコントロールされているためだと思います。

一方で、小規模な醸造所(クラフトブルワリー)では、同じレシピであっても、酵母の状態や発酵環境のわずかな違いによって、風味に変化が生まれることがあります。

もちろん、品質が安定しているブルワリーも多くありますが、そうした微妙な違いも含めて、個性として楽しめるのがクラフトビールの魅力の一つだと感じています。

「クラフトビールは一期一会だ」
そんな言葉を知人から聞いたことがあります。

まさに、発酵や酵母の観点から見ても、その時のバッチでしか生まれない風味があるのだと思います。

ブリューパブに足を運び、その瞬間のビールを味わう

それがクラフトビールの醍醐味なのかもしれません。

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まとめ

ビールの酵母は、

・エール酵母
・ラガー酵母
・野生酵母

という大きな分類があり、それぞれがビールの味や香りに大きく影響しています。

ただし、酵母は単なる種類ではなく、その中にも多くのバリエーションがあり、さらに使い方によっても結果が変わります。

酵母という視点を持つことで、ビールの違いをより深く理解できるようになります。

次の記事では、酵母の違いがどのようにスタイルや味わいに影響するのか、さらに具体的に整理していきます。

▶ 酵母でビールの味は変わる?ワイン酵母・日本酒酵母との違いを解説【03-7】

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関連リンク

■ ビール・クラフトビールの基礎知識

 ▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
 ▶ ビールの発酵と酵母を読み解く ― 仕組み・違い・種類まで全体像を整理【03-0】

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