日本のビールの飲み方― 「とりあえずビール」から多様化する飲酒文化【22-15】

日本のビールの飲み方や多様化する飲酒文化を表現したイメージ

ビールは、日本の飲酒文化の中で長く中心的な存在でした。
居酒屋や会社の飲み会、友人との集まりなど、多くの場面でビールが飲まれてきました。

しかし近年、日本のビールの飲み方は大きく変化してきています。

かつてのような
「とりあえずビール」
という文化から、現在では

・ハイボール
・チューハイ
・クラフトビール
・ノンアルコール

など、多様な飲み方が広がっています。

ここでは、日本のビールの飲み方がどのように変化してきたのかを整理してみたいと思います。


日本の飲み会文化とビール

日本では長い間、ビールは飲み会の定番のお酒でした。

居酒屋ではまず

「とりあえずビール」

という言葉が自然に使われ、最初の一杯はビールという人が多かったように思います。

会社の飲み会では

・ビールで乾杯
・人数分のビールを注文
・まずはビール

といった光景もよく見られました。

ビールは、日本の飲み会文化の中心にあったお酒だったと言えるでしょう。


ビール中心の時代

日本のビール消費量が最も多かったのは、1990年代前半と言われています。

この時期は

・人口の多い世代が社会に出ていた
・会社の飲み会文化が強かった
・ビールがアルコールの中心だった

など、さまざまな要因が重なっていました。

その結果、日本のビール市場は

年間700万キロリットル以上

という非常に大きな市場になっていました。

当時の飲み会では、ビールが次々と注文されることも珍しくなく、ビールはまさに飲み会の主役だったと言えるかもしれません。


日本のビールの飲み方の変化(年代)

日本のビールの飲み方は、時代とともに変化してきました。
ここでは、年代ごとの特徴を整理してみます。

1980〜90年代

ビール中心の時代

・とりあえずビール
 飲み会の最初に一人ずつ飲み物を聞くのではなく、まず人数分のビールを注文する文化。乾杯はビールが定番でした。

・会社の飲み会文化
 会社の歓送迎会や打ち上げなど、職場の飲み会が頻繁に行われていた時代で、ビールはその中心的なお酒でした。

・ビール消費量のピーク
 1990年代前半には、日本のビール消費量は年間700万キロリットルを超え、歴史的に最も多い時期を迎えました。


2000年代

家飲みと新ジャンル

・発泡酒の拡大
 酒税を抑えるために開発された発泡酒が普及し、ビールより安い価格帯の商品が広がりました。

・第三のビールの登場
 麦芽を使わないなどの工夫によって税負担を抑えた「新ジャンル」が登場し、家庭で飲むビール系飲料が増えました。

・家飲み
 居酒屋などで飲む外飲みだけでなく、自宅でお酒を楽しむ「家飲み」というスタイルが広がり始めました。


2010年代

飲み方の多様化

・ハイボールブーム
 ウイスキーを炭酸で割るハイボールが人気となり、ビール以外のアルコールが広く飲まれるようになりました。

・缶チューハイ(RTD)の拡大
 RTDは「Ready To Drink」の略で、開けてすぐ飲めるアルコール飲料のこと。缶チューハイなどがコンビニやスーパーで広く販売されました。

・コンビニ酒
 コンビニで手軽にアルコールを購入して飲むスタイルが広がり、飲酒の場がさらに多様化しました。


2020年代

クラフトビールと個人の嗜好

・クラフトビールの広がり
 小規模ブルワリーによる個性的なビールが増え、味わいを楽しむビール文化が広がりました。

・オンライン飲み会
 コロナ禍の影響で、ビデオ通話を使って自宅から参加する「オンライン飲み会」という新しい飲み方も登場しました。

・推しブルワリー
 特定のブルワリーやビールスタイルを応援するような、「推し」に近い楽しみ方も見られるようになりました。


日本のビール消費スタイルの変化

日本のビールの飲み方を大きく整理すると、次のような変化が見えてきます。

1980〜90年代
ビール中心/とりあえずビール/会社飲み会文化

2000年代
発泡酒・第三のビール/家飲み文化

2010年代
ハイボール・RTD/飲み方の多様化

2020年代
クラフトビール/味わうビール/推しブルワリー

このように、日本のビール文化は
「量の時代」から「多様化の時代」へと変化してきていると言えるかもしれません。


飲み方の変化

近年の日本のビールの飲み方には、いくつかの特徴があります。

家飲みと外飲み

以前は居酒屋などで飲む「外飲み」が中心でしたが、現在では

・家飲み
 自宅でビールやチューハイなどを飲むスタイル。スーパーやコンビニで購入したお酒を家で楽しむ人が増えました。

・コンビニ酒
 コンビニでアルコールを購入し、その場で飲んだり、帰宅してすぐ飲んだりするスタイル。

・オンライン飲み会
 ビデオ通話などを使い、それぞれの自宅から参加する飲み会。コロナ禍で広く知られるようになりました。


ハイボール・RTDとの競争

現在、日本のアルコール市場では

・ハイボール
・缶チューハイ(RTD)

などの人気も高まっています。

その結果、ビールだけが選ばれる時代ではなくなり、アルコールの選択肢は大きく広がりました。


飲み方の変化の背景

ビールの飲み方の変化には、いくつかの背景があります。

人口構造の変化

日本では人口減少や高齢化が進んでいます。
アルコールを飲む人口そのものが減っている可能性もあり、ビール消費量の減少にも影響していると考えられています。


経済環境

日本では長期的な景気の停滞が続いた時期もあり、外食や飲み会の頻度が減ったと言われることもあります。
その一方で、スーパーやコンビニでお酒を買って自宅で楽しむ「家飲み」が広がり、飲酒スタイルにも変化が見られるようになりました。


若者の酒離れ

若い世代では

・お酒を飲まない
・飲む量を減らす

という傾向も見られるようになりました。


飲酒文化の多様化

現在では

・ワイン
・ジン
・チューハイ
・ノンアルコール

など、さまざまなお酒が飲まれています。

その結果、アルコール文化そのものが多様化しているとも言えるでしょう。


クラフトビールが生んだ新しい飲み方

クラフトビールの広がりは、ビールの楽しみ方にも変化をもたらしました。

かつてのビールは

「酔うためのお酒」

という側面が強かったかもしれません。

しかしクラフトビールの世界では

・スタイル
・ブルワリー
・原料
・香り
・味わい

など、ビールそのものを楽しむ文化があります。

また、

・ブルワリー巡り
・ビールイベント
・飲み比べ

など、新しい楽しみ方も広がってきました。

ビールは、単なるアルコール飲料ではなく、
嗜好品としての側面も強くなってきているのかもしれません。


ビール好きとして思うこと

僕がビールを飲み始めた頃は、
「とりあえずビール」「人数分ビール持ってきて」「ビールで乾杯」
に代表されるような「飲み会」が、一つの文化としてあったように思います。

「3000円・2時間飲み放題」といった宴会プランもよく見かけましたし、
養老乃瀧、つぼ八、村さ来といった居酒屋チェーン店も、飲み会の定番の場所でした。

当時は「花金(花の金曜日)」という言葉もあり、
会社の同僚と飲みに行くことも珍しくありませんでした。

終身雇用や上下関係など、会社という組織そのものが強い結びつきを持っていた時代でもあり、
飲み会はその延長線上にあるコミュニケーションの場でもあったのかもしれません。

その意味では、飲み方も比較的画一的で、
ある意味では「飲むことが求められる場面」もあったように思います。

その後、バブル崩壊とともに日本経済は長い不景気の時代に入りました。

居酒屋も、白木屋・魚民・笑笑といった新しいチェーン店が増え、
女性の社会進出も進み、
「ノー残業デー」という言葉も広がるなど、社会の働き方や文化そのものが少しずつ変化してきました。

いわゆる「失われた30年」と呼ばれる長い不景気の中で、
終身雇用が当たり前ではない時代になり、働く人の可処分所得も変化しました。

そうした変化の中で、アルコールに使われるお金も変わってきたように思います。
それに合わせて、会社の飲み会そのものの在り方も変わってきているのではないでしょうか。

また近年では、さまざまな場面で「多様化」という言葉が語られるようになりました。
働き方だけでなく、生き方そのものが問い直されているようにも感じます。

そうした変化の中で、会社のつながりとは別のコミュニティとして、
「推し活」のような新しいつながり方も広がっているのかもしれません。

推し活の場合、会社のような上下関係は比較的少なく、
それぞれの個人が尊重されながらゆるくつながっている印象があります。

そこでは飲み方も多様で、誰かに強制されるものではなく、
自分が飲みたい量を自分で決めることができます。

結果として、無理に酒量を求められることも少なく、
それぞれの楽しみ方でお酒を飲む文化が生まれているのかもしれません。

もちろん、これはあくまで
ビール好きとして、ビールを飲む立場から見えた一つの視点ではあります。

ただ、日本のビールの飲み方は、
ある日突然大きく変わったわけではなく、
社会や文化の変化の中で、少しずつ、ゆっくりと変わってきたように思います。

ビールという飲み物は、その時代の人間関係や社会の空気を、どこか映しているお酒なのかもしれません。

そう考えると、ビールの飲み方の変化は、日本社会の変化そのものなのかもしれません。

だからこそ、ビールを飲むという行為は、単にお酒を飲むこと以上に、その時代を味わうことでもあるのかもしれません。

そして、これからも同じように、
緩やかに変化し続けていくのではないでしょうか。

何年、何十年とたったあとに振り返ってみると、
「あの頃は大きな変化の時代だった」と感じるのかもしれません。

ビール好きの愛飲家として、
そんな変化も楽しみながら、これからも楽しくビールを飲んでいけたらと思っています。


まとめ

日本のビールの飲み方は、長い時間をかけて変化してきました。

かつては

「とりあえずビール」

という文化が象徴するように、ビールが飲み会の中心でした。

しかし現在では

・ハイボール
・チューハイ
・クラフトビール
・ノンアルコール

など、さまざまな選択肢が広がっています。

ビールの消費量は減少していると言われることもありますが、その一方でビールの楽しみ方は広がっているとも言えるでしょう。

日本のビール文化は、
「量の時代」から「多様化の時代」へ
と変化しているのかもしれません。

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