普段私たちは「ビール」という言葉を、ごく自然に使っています。
居酒屋で「とりあえずビール」と注文したり、スーパーでビールを買ったり。
そのとき、「ビールとは何か」を意識することはほとんどありません。
しかし日本では、「ビール」という言葉には法律上の定義があります。
麦芽の割合。
使用できる原料。
そして酒税上の分類。
これらの条件によって、日本では
ビール・発泡酒・第三のビールという区分が生まれています。
この記事では、日本の法律から「ビールとは何か」を整理しながら、日本のビール市場との関係を見ていきます。
日本のビール系飲料の分類
まず、日本のビール系飲料は大きく次のように分類されています。
日本のビール系飲料
├ ビール :麦芽50%以上
├ 発泡酒 :麦芽50%未満
└ 第三のビール:麦芽なし / 別製法
この分類は、味やブランドの違いではなく、酒税法による定義によって決まっています。
つまり日本では、ビールは単なる飲み物ではなく、法律によって分類された酒類の一つなのです。
酒税法で定義されるビール
日本では、酒税法によってビールの条件が定められています。
現在の基本的な条件は次の通りです。
・麦芽比率が50%以上
・ホップを使用
・発酵によってアルコールを生成する
つまりビールは
麦芽・ホップ・酵母による発酵酒
という基本構造を持つ飲み物です。
一般的に私たちが「ビール」と呼んでいる商品は、この条件を満たしたものになります。
例えば
・アサヒ スーパードライ
・キリン 一番搾り
・サッポロ 黒ラベル
・サントリー ザ・プレミアム・モルツ
などがビールに分類されます。
麦芽比率という条件
日本のビール定義の中でも、特に重要なのが麦芽比率です。
現在、日本では
麦芽比率50%以上
であることが、ビールの条件になっています。
つまり、麦芽が50%未満になると、法律上はビールではなく発泡酒として扱われます。
ここで疑問が出てきます。
麦芽が50%以上ということは、残りの部分には何が入るのか?
という点です。
麦芽以外の原料(副原料)
麦芽以外の原料は、一般的に副原料と呼ばれます。
例えば、日本のビールでは次のような原料が使われることがあります。
・米
・コーン
・スターチ
・糖類
これらは大手ビールでも使われてきた副原料です。
副原料を使う理由はいくつかあります。
例えば
・味わいを軽くする
・発酵を安定させる
・香りや飲み口を調整する
といった目的です。
つまり、副原料を使うこと自体は珍しいことではなく、日本のビール文化の中でも広く行われてきました。
ただし重要なのは、副原料は何でも使えるわけではないという点です。
副原料には「使えるもの」が決まっている
日本では長い間、ビールに使える副原料が厳しく制限されていました。
例えば以前は
・米
・コーン
・スターチ
・糖類
など、ごく限られたものしか使えませんでした。
このため、日本の大手ビールは比較的似たような原料構成になることが多かったのです。
許可されていない副原料を使うとどうなるのか
では、もしビールに認められていない原料を使った場合はどうなるのでしょうか。
この場合、その酒はビールとは認められません。
法律上の分類は
発泡酒
になります。
例えばクラフトビールでは
・フルーツ
・スパイス
・ハーブ
・カカオ
・コーヒー
などを使ったビールがあります。
現在は酒税法改正によって多くの原料が認められるようになりましたが、それでも条件を満たさない場合はビールではなく発泡酒として扱われます。
つまり
味がビールでも
見た目がビールでも
法律上はビールではない
というケースが生まれるのです。
実際、クラフトビールの世界では
「味は完全にビールなのに、法律上は発泡酒」
という商品も珍しくありません。
酒税法改正(2018)とビールの自由度
2018年の酒税法改正によって、ビールの定義は大きく変わりました。
この改正によって、副原料の範囲が大きく広がります。
例えば
・フルーツ
・スパイス
・ハーブ
・カカオ
・コーヒー
なども、ビールの原料として認められるようになりました。
この変更は、日本のクラフトビール文化にとって非常に大きな意味を持っています。
クラフトビールでは、地域の素材や個性的な原料を使うことが多いためです。
制度の変化によって、日本のビールの自由度は大きく広がりました。
法律とビール市場
ここまで見てきたように、日本ではビールの定義が法律によって決められています。
そしてその定義は、酒税制度とも密接に関係しています。
例えば
・麦芽比率
・使用できる原料
・製造方法
これらの違いによって
ビール
発泡酒
第三のビール
というカテゴリーが生まれました。
つまり日本のビール市場は
法律 → 税制度 → 商品カテゴリー
という流れの中で形作られてきたとも言えます。
ビール好きとして思うこと
「原材料」や「副原料」という言葉に目が行くようになったのは、クラフトビールを飲み始めてからです。
クラフトビールを飲み始めるまでは、「副原料」というもの自体、ほとんど意識していませんでした。
一番搾りなど、「麦芽100%」をうたうビールがあるのは知っていました。
しかし、麦芽以外の副原料の存在については、特に気にもとめていなかったように思います。
当時の僕にとって、ビールは「ビール」であり、それ以上でも、それ以下でもありませんでした。
「ビールは一番搾りが美味しい」なんて言っていたこともありました。
でも、今振り返ると、それは麦芽100%だからという理由ではなく、
なんとなく一番搾りが美味しいと思っていただけだったのだと思います。
周りの人の意見に流されていただけだったのかもしれません。
「ビールは一番搾りだよね」
そんな会話ができるだけで、当時はそれで十分だったのだと思います。
ビールの味というより、ビールを飲む時間そのものを楽しんでいたのかもしれません。
「とりあえずビール」
「ビールってビールでしょ」
そんなふうに、細かいことを気にせず楽しめていた方が、もしかしたら幸せだったのかもしれません(笑)
今はというと、大手ビールを飲むときでも、原材料を見ることがあります。
「糖類って何だよ?(実際はブドウ糖や果糖、水あめなど)」
なんて思いながら飲むこともあります。
また、クラフトビールを飲みに行くと、
「イチゴを使って」
「メロンを使って」
といった説明を見ながら、
おそらく分類上は「ビール」だろうな、と思いながら飲んでいます。
さらに、ドイツのビール純粋令(ビールは麦芽・ホップ・水から造るという考え方)を知ると、
「ビールらしさとは何だろう?」
「本当のビールとは何だろう?」
などと考えてしまうこともあります。
酔うためのビールから、味わうためのビールへ。
気がつけば、少しめんどくさい人になっている自分がいます(笑)
でも、僕にとっては、そういう楽しみ方が合っているのだと思います。
クラフトビールに出会い、飲み歩き、そして大手ビールを改めて飲み直してみる。
そうした経験の中で、自分に合ったビールの楽しみ方が見つかってきたのだと思います。
自分に合った「ビール」の楽しみ方、
自分に合った「お酒」の楽しみ方。
そんなものが見つかることが、一番良いのではないでしょうか。
まとめ
日本では、ビールは酒税法によって定義されています。
その条件には
・麦芽比率
・使用できる原料
・発酵による製造
といったルールがあります。
この制度によって、日本では
・ビール
・発泡酒
・第三のビール
という区分が生まれました。
ビールを理解するためには、味やスタイルだけでなく、法律上の定義を知ることも重要です。
次の記事では、ビールに似たカテゴリーである「発泡酒」について、もう少し詳しく見ていきます。
▶ 発泡酒とは何か ― ビールとの違いと、日本独自のビール文化【22-5】
・ハイボール
・チューハイ
・クラフトビール
・ノンアルコール
など、さまざまな選択肢が広がっています。
ビールの消費量は減少していると言われることもありますが、その一方でビールの楽しみ方は広がっているとも言えるでしょう。
日本のビール文化は、
「量の時代」から「多様化の時代」へ
と変化しているのかもしれません。
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関連リンク
■ ビールの基本・味わい・歴史・市場までを体系的に整理した一覧記事
▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
■ 日本のビール市場を知る
▶ 日本のビール市場を理解する ― 酒税・分類・市場構造まで一気に整理【22】
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