日本のビール税とは何か ― 発泡酒・第三のビールを生んだ酒税の仕組み【22-2】

ビール税と発泡酒や第三のビールの関係を示した制度のイメージ

日本でビールを買うとき、価格を見て選ぶ人が多いように思います。

スーパーで並ぶビール。
発泡酒。
第三のビール。

似たような見た目の商品でも、価格は少しずつ違っています。

この価格差の背景にあるのが、日本の「ビール税」です。

ビール税は、日本の酒税制度の中でも特に特徴的な税体系を持っています。
そしてこの税制度が、発泡酒や第三のビールといった新しいカテゴリーを生み出してきました。

この記事では、日本のビール税の仕組みを整理しながら、日本のビール市場との関係を見ていきます。


ビール税とは何か

ビール税とは、ビールにかかる酒税のことです。

日本では酒類ごとに税率が異なっており、ビールもその一つとして課税されています。

酒税は基本的に「容量」に対して課税されます。
つまり、アルコールの量ではなく、一定量の酒に対して税金がかかる仕組みです。

たとえば、350ml缶のビールにも、酒税が含まれています。

この税金はメーカーが納める形になりますが、最終的には商品の価格に含まれるため、消費者が間接的に負担していることになります。

つまり私たちは、ビールを買うとき、その価格の一部として酒税を支払っていることになります。


日本のビール税の特徴

日本のビール税には、いくつかの特徴があります。

その一つは、税率が比較的高いことです。

ビールは長い間、日本で最も安定して売れるアルコール飲料でした。
そのため政府にとっては、税収を確保しやすい商品でもありました。

結果として、ビールには高めの税率が設定されるようになります。

もう一つの特徴は、「原料」によって税率が変わることです。

日本では長い間、ビールは

  • 麦芽
  • ホップ
  • 酵母

を主原料とする飲み物として定義されてきました。

そして麦芽の使用割合などによって、税率や分類が変わる仕組みが作られていました。

この制度が、後に発泡酒などのカテゴリーを生むことになります。


発泡酒の誕生

1990年代、日本のビール市場には新しいカテゴリーが登場します。

それが発泡酒です。

発泡酒は、麦芽の使用割合を抑えることで、ビールよりも低い税率が適用される商品として開発されました。

メーカーにとっては、税負担を抑えながらビールに近い味わいの商品を作ることができます。

消費者にとっては、ビールよりも安い価格で似た味わいを楽しめる商品になります。

こうして発泡酒は、1990年代後半から急速に広がっていきました。


第三のビールの登場

しかし発泡酒が広がると、今度は発泡酒の税率も引き上げられるようになります。

その結果、メーカーはさらに新しいカテゴリーを開発します。

それが「第三のビール」と呼ばれる商品です。

第三のビールにはいくつかのタイプがあります。

  • 麦芽を使わないビール風飲料
  • 発泡酒に別のアルコールを加えた商品

などです。

これらはビールでも発泡酒でもないカテゴリーとして扱われ、さらに低い税率が適用されていました。

こうして日本では

  • ビール
  • 発泡酒
  • 第三のビール

という三つのカテゴリーが生まれます。


具体例で見るビール税

ここまで日本のビール税の仕組みを見てきましたが、実際にどれくらいの税金がかかっているのか、具体例で見てみましょう。

ここでは分かりやすくするため、350ml缶を例に考えてみます。

なお、日本の酒税は制度改正によって段階的に税率が変更されてきました。
そのためここでは、発泡酒や第三のビールが広く普及していた2000年代~2017年頃の水準を目安として、概算で紹介しています。

また、かつては発泡酒は麦芽比率によって税率が細かく分かれていました。しかし現在の酒税制度では、麦芽比率に関係なく発泡酒は同じ税率が適用されています。


パターン1:麦芽100%のビールの場合

まず、一般的なビール(麦芽100%)を例に考えてみます。

現在のビール税はおおよそ

1リットルあたり 約63円

程度です。

これを350ml缶で計算すると

350ml ÷ 1000ml × 63円
約22円

つまり、350mlのビール1缶には
およそ20円前後の酒税が含まれていることになります。


パターン2:麦芽75%未満の発泡酒の場合

次に、発泡酒を例に見てみます。

発泡酒は麦芽の使用割合によって税率が変わりますが、ここでは分かりやすく

麦芽75%未満の発泡酒

を例にします。

この場合の税率は

1リットルあたり 約47円

程度です。

350ml缶で計算すると

350ml ÷ 1000ml × 47円
約16円

つまり、350ml缶の場合
約16円程度の酒税になります。


パターン3:第三のビールの場合

さらに税率を抑えたカテゴリーとして登場したのが「第三のビール」です。

第三のビールにはいくつかのタイプがありますが、代表的なものは

  • 麦芽を使わないビール風飲料
  • 発泡酒に別のアルコールを加えた商品

などです。

これらはビールや発泡酒とは別のカテゴリーとして扱われ、比較的低い税率が設定されてきました。

税率はおおよそ

1リットルあたり 約28円

程度です。

350ml缶で計算すると

350ml ÷ 1000ml × 28円
約10円

つまり350ml缶の場合、
約10円前後の酒税となります。


② 「税率の違いが価格差を生む」

このように、同じ350mlでも

・ビール:約22円
・発泡酒:約16円
・第三のビール:約10円

と、酒税の金額が変わります。

1缶あたりの差は数円程度に見えるかもしれません。
しかしメーカーが大量に生産する商品では、この差は非常に大きな意味を持ちます。

この税率の違いを背景に、日本では

  • 発泡酒
  • 第三のビール

といった新しいカテゴリーの商品が生まれてきました。

つまり日本のビール市場では、
税制度が商品の設計や市場構造に大きく影響してきたのです。


日本のビール税

日本のビール税は

  • 原料
  • 麦芽比率
  • 商品カテゴリー

によって分類されてきました。

文章だけだと少し分かりにくいため、ここで一度整理してみましょう。

例えば日本のビール系飲料は、次のような分類になっていました。

ビール   :麦芽50%以上
発泡酒   :麦芽50%未満
第三のビール:麦芽を使わない、または別の製法

そして、この分類ごとに税率が設定されていました。

その結果、日本では

税制度 → 商品開発 → 新しいカテゴリー誕生

という流れが生まれます。

この構造は、日本のビール市場の大きな特徴と言えます。


税制度が市場を作る

ここで興味深いのは、商品カテゴリーが税制度によって生まれていることです。

通常、商品は味や製法の違いによって分類されます。

しかし日本のビール市場では、税率の違いが商品カテゴリーを作ってきました。

メーカーは税制度に合わせて商品を開発し、消費者は価格を見て商品を選びます。

その結果、日本のビール市場は非常に独特な構造になりました。


税率の統一へ

近年、日本の酒税制度は見直しが進められています。

2020年代にかけて、ビール・発泡酒・第三のビールの税率は段階的に統一される方向に進んでいます。

かつては発泡酒は麦芽比率によって税率が細かく分かれていました。しかし現在の酒税制度(2026年3月の執筆時点)では、麦芽比率に関係なく発泡酒は同じ税率が適用されています。
また、かつてはビール・発泡酒・第三のビールで大きく異なっていた税率も、段階的な改正によって差が縮まり、2026年には同一税率になります。

2026年10月以降は、ビール・発泡酒・第三のビールの酒税は 350mlあたり約54円程度でほぼ統一される予定です。

これは、複雑になりすぎたビール系飲料の税制度を整理するための改革とも言われています。

税率が統一されることで、これまで価格差によって成立していた商品カテゴリーの意味も変わっていく可能性があります。

ビール市場は、制度の変化とともに形を変えてきました。
日本のビール市場は、味だけでなく制度によって形作られてきた市場でもあります。

そしてこれからも、制度と市場は相互に影響しながら変化していくと考えられます。


ビール好きとして思うこと

発泡酒が出始めたころ、価格の安さも手伝い、いろいろと飲んでみました。
当時の僕は、「安く飲めること」が大事でした。

その中で口に合ったのが「淡麗グリーンラベル」でした。
「糖質70%オフ!」というのも手伝い、よく飲んでいた記憶があります。

正直なところ、ビール、発泡酒、第三のビールの違いをよく知らないまま、
「ビールが旨い」「発泡酒なら淡麗グリーンラベルがいいよね」
そんな感じで言っていたようにも思います。

そして当時は、それで満足していたようにも思います。

今あらためて見ると、
「第三のビールって何?」と思ってしまいます。
(ビールじゃないじゃん!?とも思います。)

クラフトビールを飲むようになり、制度のことを少しずつ知るようになると、見え方も少し変わってきました。

例えば、クラフトビールを飲んでいると、よく「発泡酒」に出会います。
(麦芽が50%未満で造られている場合や、フルーツやスパイスなど副原料を多く使っている場合、法律上は発泡酒として分類されることがあるからです。)

そう考えると、単純に「美味しくない」「美味しい」という話ではないようにも感じます。

また、大手ビールでも「麦芽100%」のビールがありますよね。
サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」、サッポロの「ヱビスビール」、キリンの「一番搾り」などです。

そうすると、
「じゃあ麦芽100%同士で飲み比べてみよう!」
などと思ったりもします。

制度を知ることで、ビールの風味を見る視点が少し変わりました。
そして今では、飲み方や味わい方も含めて、ビールをさらに楽しめるようになってきている気がします。


まとめ

日本のビール税は、単なる税制度ではありません。

ビールの価格。
発泡酒の誕生。
第三のビールの登場。

こうした市場の変化は、酒税制度と深く関係しています。

つまり日本のビール市場は、味や製法だけでなく、制度の影響を受けながら形作られてきました。

ビールを理解するためには、味わいやスタイルだけでなく、その背後にある制度を見ることも重要だと思います。

▶ ビールの分類とは何か ― ビール・発泡酒・第三のビールの違いから見る日本のビール市場【22-3】

・ハイボール
・チューハイ
・クラフトビール
・ノンアルコール

など、さまざまな選択肢が広がっています。

ビールの消費量は減少していると言われることもありますが、その一方でビールの楽しみ方は広がっているとも言えるでしょう。

日本のビール文化は、
「量の時代」から「多様化の時代」へ
と変化しているのかもしれません。

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関連リンク

■ ビールの基本・味わい・歴史・市場までを体系的に整理した一覧記事
 ▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
■ 日本のビール市場を知る
 ▶ 日本のビール市場を理解する ― 酒税・分類・市場構造まで一気に整理【22】

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