ビールは日本でもっとも身近なお酒の一つですが、
「日本のビール市場がどれくらいの規模なのか」を意識する機会はあまり多くありません。
スーパーやコンビニに行けば、ビール売り場には多くの商品が並び、
居酒屋に行けば最初の一杯としてビールを注文する人も多くいます。
こうした日常の風景からも分かるように、ビールは日本のアルコール市場の中でも非常に大きな存在です。
日本のビール市場を考える場合、一般的には
・ビール
・発泡酒
・第三のビール
を含めた「ビール系飲料市場」として捉えられます。
これは、日本の酒税制度の影響で生まれた独特の市場構造です。
市場調査の推計では、
2024年前後の日本のビール系飲料市場は約3〜4兆円規模とされています。
また消費量で見ると、
日本では現在
年間およそ400万キロリットル前後
のビール系飲料が飲まれています。
これを人口で割ると、
1人あたり年間 約30〜35リットル程度
となります。
350ml缶に換算すると、
年間およそ90〜100本程度
になります。
もちろん実際にはお酒を飲まない人も多いため、ビールをよく飲む人は、これよりかなり多く飲んでいることになります。
ビール市場の縮小
ただし、日本のビール市場は長期的に見ると縮小傾向にあります。
日本のビール消費量は1990年代にピークを迎えました。
当時のビール消費量は
年間700万キロリットル以上
と言われています。
これは単純計算すると
350ml缶で約200億本以上
という非常に大きな量です。
仮に1本200円程度として計算すると、
市場規模はおおよそ4兆円前後
という巨大な市場だったと考えられます。
しかし2000年代以降、日本のビール消費量は徐々に減少していきました。
その背景にはいくつかの要因があります。
例えば
・人口減少
・若年層のアルコール離れ
・健康志向の高まり
・飲酒スタイルの変化
などが挙げられます。
また、お酒の選択肢も大きく増えました。
以前は
・ビール
・日本酒
・焼酎
などが中心でしたが、現在では
・チューハイ
・ハイボール
・RTD(缶入りアルコール飲料)
などの人気が高まっています。
こうした変化もあり、日本のビール市場は、長期的には縮小傾向にある市場となっています。
ビール系飲料という市場
日本のビール市場を理解するうえで重要なのが、
「ビール系飲料」という市場構造です。
日本では酒税制度の影響により、
・ビール
・発泡酒
・第三のビール
という複数のカテゴリーが存在しています。
そのため、日本のビール市場は
ビール市場 = ビール系飲料市場
として形成されています。
現在(執筆の2026年3月時点)の市場構成は、おおよそ次のような割合とされています。
日本のビール系飲料市場(概算)
ビール:約50%
第三のビール:約35〜40%
発泡酒:約10〜15%
1990年代にはビールが市場の大部分を占めていましたが、酒税制度の影響によって発泡酒や第三のビールが登場し、市場構造は大きく変化しました。
特に2000年代以降は第三のビールが大きく伸び、ビール市場の中でも重要なカテゴリーになりました。
近年は酒税改正の影響もあり、
ビールのシェアが再び増える動きも見られています。
クラフトビールの市場
ビール市場の中で、近年注目されているのがクラフトビールです。
クラフトビールとは、小規模ブルワリーが造る個性的なビールを指すことが多く、
・地域のブルワリー
・ブリューパブ
・マイクロブルワリー
などがこの市場を支えています。
日本では1994年の酒税法改正によって、ビール製造免許の条件が大きく緩和されました。
それまで年間200万リットルだった最低製造量が
6万リットルまで引き下げられたことで、
小規模ブルワリーが誕生し、いわゆる「地ビール」が広がりました。
現在では全国に多くのブルワリーが存在しています。
ただし市場規模として見ると、クラフトビールはまだ小さく、ビール市場全体の中では
数%程度のシェア
とされています。
それでも、ビール文化という視点で見ると、クラフトビールの存在感は年々大きくなっています。
ビール市場のこれから
日本のビール市場は今後も変化していくと考えられます。
その大きな要因の一つが、酒税制度の見直しです。
日本では長い間、
・ビール
・発泡酒
・第三のビール
で税率が大きく異なっていました。
しかし酒税制度の改正によって、
これらの税率は段階的に統一されることになっています。
そして2026年にはビール系飲料の税率が基本的に同一になります。
これによって、
・商品構成
・価格
・市場シェア
などが変化する可能性があります。
日本のビール市場は、
・制度
・消費者の嗜好
・メーカーの戦略
といった要素によって、これからも形を変えていく市場と言えるでしょう。
ビール好きとして思うこと
僕がビールを飲み始めた35年前(1990年頃)は、まずは「ビール」という時代でした。
飲み放題でもビールを多く飲むことが多く、
「たくさん飲めることが良い」
「お酒に強いことが良い」
といった空気があったように思います。
今では考えられないような飲み方があった時代でもありました。
・先輩の酒は一気で飲む(今ではあり得ない)
・酔って吐いても、また飲まされる(今ではあり得ない)
・お酒が飲めない人でも飲まされる(今ではあり得ない)
幸い、当時の僕の周りには、そこまで無理をさせる人はいませんでした。
それでも、「ビールを多く飲める人」「お酒に強い人」がカッコよく見えていたように思います。
そうした時代背景や人口構成の影響もあって、1990年頃のビール市場は非常に大きかったのではないか、と感じています。
それから少しずつ時代が変わり、
飲み方が変わるだけでなく、お酒を飲む人自体も減ってきている。
そんな印象を持っています。
そのような飲み手の変化の一つとして、クラフトビールの広がりもあるように思います。
クラフトビールには、大手ビールよりも大幅に価格が高いものも多くあります。
それでも、そうした価格帯のビールを楽しむ人が、少しずつですが増えてきているように感じます。
ビール市場の変化は、飲み手である私たちの価値観の変化そのものなのかもしれません。
人口減少を考えると、今後アルコールの総消費量が大きく増える可能性は高くないでしょう。
総量が減る中で、ビール市場の売上も全体としては減っていくのではないかと、個人的には考えています。
その一方で、
・大手ビールメーカーの手に取りやすい価格のビール
・1本1000円以上するような高価格帯のビール
といった二極化が進んでいく可能性もあるように思います。
さらに、高価格帯のビールの中でも、
・ワインやウイスキーのような「嗜好品」としてのクラフトビール
・アーティストやプロスポーツチームとのコラボ商品
・地域性やストーリーを持ったビール
など、付加価値を重視する方向に広がっていく道もあるのではないでしょうか。
35年来のビール愛好家として、これからのビール市場の動向を、温かい目で見守っていきたいと思っています。
まとめ
日本のビール市場は、
・ビール
・発泡酒
・第三のビール
を含むビール系飲料市場として形成されています。
現在の市場規模は
約3〜4兆円規模
とされており、日本の酒類市場の中でも大きな存在です。
また消費量で見ると、
年間約400万キロリットル前後
1人あたり年間 約30〜35リットル
程度のビール系飲料が飲まれています。
一方で、日本のビール市場は長期的には縮小傾向にあります。
その背景には
・人口減少
・飲酒習慣の変化
・他のアルコール飲料の増加
などがあります。
しかし、
・クラフトビールの広がり
・酒税制度の変化
などによって、市場構造は今も変化を続けています。
ビールは身近なお酒ですが、
市場という視点で見ると、
制度・文化・消費が重なり合った興味深い市場
と言えるのかもしれません。
こうして見てきたように、日本のビール市場は制度や消費の変化とともに形を変えてきました。
では、これらのビールはどのような流通経路を通って、私たちの手元に届いているのでしょうか。
次の記事では、日本のビール市場を支えるビール流通の仕組みについて整理していきます。
▶ 日本のビール流通 ― ビールはどのように私たちの手元に届くのか【22-10】
・ハイボール
・チューハイ
・クラフトビール
・ノンアルコール
など、さまざまな選択肢が広がっています。
ビールの消費量は減少していると言われることもありますが、その一方でビールの楽しみ方は広がっているとも言えるでしょう。
日本のビール文化は、
「量の時代」から「多様化の時代」へ
と変化しているのかもしれません。
────────────────
関連リンク
■ ビールの基本・味わい・歴史・市場までを体系的に整理した一覧記事
▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
■ 日本のビール市場を知る
▶ 日本のビール市場を理解する ― 酒税・分類・市場構造まで一気に整理【22】
────────────────
