ビール税の一本化 ― 日本のビール市場を変える酒税制度の大きな転換【22-11】

ビール税の一本化による制度変更をイメージで表現した画像

日本では長い間、

・ビール
・発泡酒
・第三のビール

という「ビール系飲料」に、それぞれ異なる税率が適用されてきました。

これは、日本の酒税制度の特徴でもあります。

同じように見えるビールでも、

・麦芽の使用量
・原材料
・製造方法

によって税率が変わる仕組みになっていました。

その結果、日本では

・発泡酒
・第三のビール

といった独自のカテゴリーが生まれ、市場の構造にも大きな影響を与えてきました。

しかし、この複雑になった酒税制度は見直されることになり、段階的な税制改正によって、ビール系飲料の税率が統一されることになりました。

そして2026年10月には、

ビール
発泡酒
第三のビール

の税率が基本的に同一になります。

これが「ビール税一本化」と呼ばれる改革です。


なぜ税率はバラバラだったのか

そもそも、なぜビール系飲料の税率は異なっていたのでしょうか。

日本の酒税制度では、長い間

「ビール=高い税率」

という構造が続いてきました。

その理由の一つは、ビールが大量に消費されるお酒だったからです。

酒税は国にとって重要な税収源の一つであり、消費量の多いビールには比較的高い税率が設定されていました。

しかし1990年代になると、この制度が市場に大きな影響を与えることになります。


発泡酒と第三のビールが生まれた背景

ビールに高い税率が設定されていたことで、メーカーは新しい商品を開発するようになります。

その一つが発泡酒です。

発泡酒は、

・麦芽比率を低くする
・原材料を調整する

ことで、ビールよりも低い税率を実現した商品です。

さらにその後、

・麦芽を使わない
・別のアルコールを加える

といった方法で生まれたのが、第三のビールです。

これらの商品は、

「ビールに近い味わいを持ちながら、価格を抑えた商品」

として広く普及しました。

結果として、日本のビール市場は

ビール
発泡酒
第三のビール

という独特の構造を持つ市場になりました。


なぜ税率統一が行われるのか

しかし、この制度にはいくつかの課題もありました。

まず、制度が非常に複雑になってしまったことです。

原材料や麦芽比率によって細かく税率が変わるため、消費者にとっても分かりにくい制度になっていました。

また、

税率の違いを前提に商品が開発される

という状況も生まれていました。

そこで政府は、酒税制度の見直しを進めることになります。

その結果、

ビール系飲料の税率を段階的に統一する

という方針が決まりました。

2020年代に入ってから税率の調整が進み、
最終的に2026年10月に税率が基本的に一本化されることになります。


ビール市場への影響

ビール税の一本化は、日本のビール市場にも影響を与える可能性があります。

これまでの市場では、

・ビール
・発泡酒
・第三のビール

の価格差が比較的大きく存在していました。

しかし税率が統一されることで、
価格差は縮小していく可能性があります。

そうなると、

・商品構成
・メーカーの戦略
・消費者の選択

などにも変化が生まれるかもしれません。

例えば、

・第三のビールの位置づけ
・発泡酒の役割
・ビールのシェア

などが変わる可能性もあります。

また、クラフトビールのような新しい市場との関係も、今後変化していく可能性があります。


ビール好きとして思うこと(2026年3月執筆)

「ビール税の一本化」という言葉について、ビール好きな人なら聞いたことがあるかもしれません。
聞いたことがある人でも、「ビール・発泡酒・第三のビールの税金が一つになる」程度の認識ではないでしょうか。

日本では酒税制度の影響により、ビールとは別に発泡酒、そして第三のビールが独自の進化を遂げてきました。
それぞれが、酒税制度の制限の中で、製造方法・風味・価格といった点で工夫を重ねてきた商品でもあります。

しかし、大きな前提の一つである「税金」が変わります。

そうなったときに、消費者が何を選ぶのかは、とても興味があります。

・価格に惹かれたのか
・風味に惹かれたのか
・商品のストーリーに惹かれたのか
・メーカーブランドに惹かれたのか

発泡酒や第三のビールは、ビールに近い味わいのものを、酒税の関係でビールより安く提供するという背景の中で生まれてきました。
個人的な記憶ではありますが、前面に出ていたのは「ビールに対して安い」という価値だったように思います。

それが25年ほどの時間を経て、訴求ポイントである「ビールに対する安さ」が弱くなったとき、

・価格で選ぶ別の商品に移る人が多いのか
・この25年の間に風味やブランド、ストーリーに惹かれて、そのまま愛飲し続ける人が多いのか

という点は、とても興味深いところです。

また、企業側も何らかの戦略を変える可能性があります。

例えば、
サントリーは「第三のビール」である金麦について、2026年10月の酒税改正に合わせて麦芽比率を変更し、通常のビールとして発売する方針を示しています。

(産経新聞より。詳しくは以下の記事をご覧ください)
https://www.sankei.com/article/20250930-3DTA52MOLFO35CONER6MUGVSP4/

また別の可能性として、税制が一本化され、ビール系飲料の割安感が薄れたことで、他のアルコール飲料へ移る人が増えるのかもしれません。

あるいは逆に、ビール系飲料の価格メリットが薄れることで、そもそもアルコールを飲まなくなる人が増える可能性もあります。
もしそうなれば、結果として税収が減る可能性もあり、国にとっては皮肉な結果になるかもしれません。

いずれにしても、この酒税改正はビール業界にとって一つの大きな転機になる可能性があります。

そしてこれは、日本のビール市場が制度とともに変化してきた歴史の、また一つの節目なのかもしれません。

ビール好きとしては、これからの変化を温かく見守っていきたいと思います。


まとめ

日本では長い間、

ビール
発泡酒
第三のビール

というカテゴリーごとに異なる税率が設定されていました。

その結果、日本のビール市場には独特の構造が生まれました。

しかし酒税制度の見直しによって、
2026年10月にはビール系飲料の税率が基本的に統一されます。

この「ビール税一本化」は、

・価格
・商品構成
・市場構造

などに影響を与える可能性があります。

ビール市場はこれまで、

制度
市場
価格
流通

といった多くの要素によって形づくられてきました。

そして今、その制度が大きく変わろうとしています。

ビール税一本化は、日本のビール市場にとって
一つの大きな転換点になるのかもしれません。

日本では酒税制度がビール市場の形を大きく左右してきました。
しかし、ビールに対する税の考え方は国によって大きく異なります。
次の記事では、世界のビール税制度を見ながら、日本との違いを整理していきます。

 ▶ 世界のビール税 ― 国によって大きく異なるビール課税の仕組み【22-12】

・ハイボール
・チューハイ
・クラフトビール
・ノンアルコール

など、さまざまな選択肢が広がっています。

ビールの消費量は減少していると言われることもありますが、その一方でビールの楽しみ方は広がっているとも言えるでしょう。

日本のビール文化は、
「量の時代」から「多様化の時代」へ
と変化しているのかもしれません。

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関連リンク

■ ビールの基本・味わい・歴史・市場までを体系的に整理した一覧記事
 ▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
■ 日本のビール市場を知る
 ▶ 日本のビール市場を理解する ― 酒税・分類・市場構造まで一気に整理【22】

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