日本のビール市場のもう一つの歴史
1994年、日本のビール市場は大きな転換点を迎えました。
酒税法改正によって小規模ブルワリーのビール醸造が可能になり、日本ではいわゆる「地ビール時代」が始まります。
この流れは、後にクラフトビール文化へとつながっていきました。
しかし、この時代の変化は小規模ブルワリーだけに影響したわけではありません。
むしろ日本のビール市場の中心にいたのは、長く市場を支えてきた大手ビール会社でした。
キリン
アサヒ
サッポロ
サントリー
こうした企業は、大規模な醸造設備と全国的な流通網を持ち、日本のビール文化を支えてきました。
1994年以降、日本のビール市場では
発泡酒の誕生
第三のビールの登場
クラフトビール文化の広がり
といったさまざまな変化が起こります。
ここでは、規制緩和以降の大手ビール会社の動きを整理しながら、日本のビール市場がどのように変化してきたのかを見ていきます。
① 規制緩和と大手ビール会社
1994年、日本では酒税法が改正されました。
この改正によって、ビール醸造免許の基準が大きく引き下げられます。
年間生産量
200万リットル
↓
6万リットル
この変更によって、小規模ブルワリーでもビールを造ることが可能になりました。
こうして日本各地でブルワリーが誕生し、いわゆる地ビールブームが始まります。
しかし当時の市場を見ると、日本のビール市場の中心は依然として大手ビール会社でした。
大手メーカーは
大規模生産
全国流通
強いブランド力
を持ち、日本のビール市場を支え続けていました。
地ビールは新しい文化として注目されましたが、市場規模としてはまだ小さく、日本のビール市場の中心は大手メーカーだったのです。
▶ 規制緩和と大手ビール会社 ― 1994年、日本のビール市場は転換点を迎えた【21-1】
② 発泡酒の誕生(1994)
1990年代後半、日本のビール市場には新しいカテゴリーが登場します。
それが発泡酒です。
日本の酒税制度では、麦芽の使用割合によって税率が変わります。
この制度を利用して生まれたのが発泡酒でした。
麦芽使用量を抑えることで、ビールよりも税率を低くすることができます。
その結果、発泡酒はビールよりも価格を抑えた商品として広がっていきました。
大手ビール会社は発泡酒市場に積極的に参入し、新しい商品を次々と発売していきます。
発泡酒は、日本のビール市場に新しいカテゴリーを生み出しました。
▶ 発泡酒の誕生(1994) ― 発泡酒はなぜ生まれたのか【21-2】
③ ビール系飲料の多様化
発泡酒の普及は、日本のビール市場にさらに新しいカテゴリーを生み出します。
それが**第三のビール(新ジャンル)**です。
第三のビールは
麦芽を使わない発泡性アルコール飲料
発泡酒に別のアルコールを加えた飲料
など、さまざまな製法によって作られました。
こうして日本の市場には
ビール
発泡酒
第三のビール
という三つのカテゴリーが並ぶことになります。
この構造は、世界的に見ても非常に特徴的なものです。
多くの国では、ビール市場は基本的にビールが中心です。
しかし日本では、酒税制度の影響によって
ビール系飲料市場という独特の市場が形成されました。
▶ ビール系飲料の多様化 ― 第三のビールが生んだ日本独自のビール市場【21-3】
④ 大手ビール会社のクラフトビール参入
2000年代後半になると、日本ではクラフトビール文化が徐々に広がっていきます。
地域ブルワリーの増加。
クラフトビール専門店の拡大。
ビールイベントの増加。
こうした動きは、日本のビール文化を少しずつ変えていきました。
この流れの中で、大手ビール会社もクラフトビール市場に関わるようになります。
クラフトブランドの展開。
クラフトビールの販売。
ブルワリーとの協力。
こうした取り組みによって、大手企業もクラフトビール文化の一部を担うようになりました。
▶ 大手ビール会社のクラフトビール参入 ― 日本のクラフトビール市場はどう広がったのか【21-4】
⑤ 海外クラフトビールとの関係
日本のクラフトビール文化は、海外のビール文化とも深く関係しています。
特に大きな影響を与えたのが、アメリカのクラフトビール革命です。
アメリカでは1970年代以降、小規模ブルワリーが次々と誕生し、多様なビールスタイルが生まれました。
IPA
スタウト
セゾン
サワービール
こうしたビールスタイルは、日本のブルワリーにも影響を与えていきます。
また、海外ブルワリーとのコラボレーションやビールイベントなどを通じて、ビール文化の交流も広がっていきました。
▶ 海外クラフトビールとの関係 ― 世界のクラフトビール文化は日本に何をもたらしたのか【21-5】
⑥ 現在の大手ビール会社の戦略
現在の日本のビール市場は、非常に多様な構造になっています。
ビール
発泡酒
第三のビール
クラフトビール
さらに
低アルコール飲料
ノンアルコールビール
といった商品も増えています。
消費者のライフスタイルが変化する中で、大手ビール会社は幅広い商品ラインを展開しています。
また、日本国内だけでなく、海外市場への展開も重要な戦略となっています。
海外企業の買収。
海外ブランドとの提携。
海外市場での販売拡大。
こうした動きによって、日本のビール会社は世界市場でも存在感を高めています。
▶ 現在の大手ビール会社の戦略 ― 多様化する日本のビール市場【21-6】
まとめ ― 多様化する日本のビール文化
1994年以降、日本のビール市場は大きく変化してきました。
規制緩和による地ビールの誕生。
発泡酒の登場。
第三のビールによる市場の多様化。
クラフトビール文化の広がり。
海外ビール文化との交流。
こうした変化を経て、日本のビール文化はより多様なものになっています。
大手ビール会社の歴史は、日本のビール市場の変化そのものでもあります。
ビールは単なるアルコール飲料ではありません。
制度や社会、そして文化の影響を受けながら発展してきた飲み物なのです。
その背景を知ることで、普段飲んでいる一杯のビールも、少し違った味わいに感じられるかもしれません。
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