ビールの苦味はホップだけじゃない?モルト・アルコール・保存による違いを解説【9-3】

ビールの苦味がホップ以外にもモルトやアルコール、保存によって変わることを表現したビールと原料のイメージ

ビールの苦味というと、「ホップ」を思い浮かべる人が多いと思います。

しかし実際には、ビールの苦味はホップだけで決まっているわけではありません。

まず、ビールの苦味は大きく次のように分けて考えることができます。

・舌に鋭く残る苦さ(シャープな苦味)
・余韻として続く苦さ(アフタービター)
・焙煎由来のビター感(ローストビター)
・ドライさとして感じる苦さ(キレ・渇き)
・草っぽさ・青さとして感じる苦さ(グラッシー、ハーバル)

このうち、

・舌に鋭く残る苦さ(シャープな苦味)
は主にホップ由来の苦味です。

また、

・草っぽさ・青さとして感じる苦さ(グラッシー、ハーバル)
はホップ由来ではありますが、厳密には苦味というよりも香り・風味の要素です。

つまり、これら以外の

・余韻として続く苦さ(アフタービター)
・焙煎由来のビター感(ローストビター)
・ドライさとして感じる苦さ(キレ・渇き

が、「ホップ以外によって生まれる苦味」と言えます。

この記事では、この3つに焦点を当てて整理していきます。


ローストモルトの苦味

黒ビールの苦味

スタウトやポーターといった黒ビールを飲むと、コーヒーやチョコレートのような苦味を感じることがあります。

これは、ホップではなく「ローストモルト」による苦味です。

先ほどの分類でいうと、

「焙煎由来のビター感(ローストビター)」

にあたります。

焙煎由来のビター感

モルト(麦芽)を強く焙煎することで、

・コーヒーのような苦味
・カカオのような苦味
・焦げのニュアンス

といった、香ばしさと一体となった苦味が生まれます。

この苦味は、舌に鋭く残るというよりも、風味として広がるのが特徴です。


アルコールが作るドライ感

ビールを飲んだときに、「キレがある」「ドライ」と感じることがあります。

これは苦味成分そのものではありませんが、

ドライさとして感じる苦さ(キレ・渇き)

にあたる要素です。

アルコール度数が高いビールや、発酵がしっかり進んだビールは、

・甘みが少ない
・後味がスッと切れる

といった特徴があります。

この「甘さが残らない感覚」が、苦味として認識されることがあります。


ポリフェノールの影響

ビールには、ホップやモルト由来のポリフェノールが含まれています。

ポリフェノールは、渋みや収れん感をもたらす成分です。

この感覚は、

余韻として続く苦さ(アフタービター)

として感じられることがあります。

つまり、アフタービターはホップだけでなく、

・ポリフェノール
・ロースト
・その他の成分

といった複数の要素によって構成される苦味です。


ビールの保存状態と苦味

酸化

ビールは時間とともに変化します。

酸化が進むと、

・苦味が丸くなる
・苦味の輪郭がぼやける

といった変化が起こります。

これは、

「鋭い苦味」から「余韻として続く苦さ」へ変化する

とも言えます。

劣化

保存状態が悪いと、

・温度
・光
・時間

の影響によって、ビールのバランスが崩れます。

その結果、

・不快な苦味
・雑味としての苦味

が強く感じられることもあります。


ビールスタイルと苦味の違い

IPA

IPAはホップ由来の苦味が中心のスタイルです。

つまり、

「舌に鋭く残る苦さ(シャープな苦味)」

が主役になります。

ただし、香りやバランスによって、

「余韻として続く苦さ」

として感じられることもあります。

スタウト

スタウトはローストモルトによる苦味が特徴です。

つまり、

「焙煎由来のビター感(ローストビター)」

が中心です。

IBUが低くても、しっかりと苦味を感じるのはこのためです。

ピルスナー(ラガー)

ピルスナーに代表されるラガービールは、ホップの苦味とキレのバランスが特徴です。

この場合の苦味は、

「舌に鋭く残る苦さ(シャープな苦味)」
「ドライさとして感じる苦さ(キレ・渇き)

が組み合わさったものとして感じられます。

特に日本のピルスナーでは、発酵がしっかり進み、後味がすっきりしているため、苦味が強いというよりも「キレのある苦さ」として感じられることが多いです。

そのため、IPAのように強烈な苦味ではなく、バランスの中で心地よく感じられる苦味が特徴です。


実際に飲んだときの感じ方

ここまで、ビールの苦味がホップだけでなく、ローストモルトやアルコール、ポリフェノール、保存状態などによって変わることを見てきました。

では、この違いを踏まえて、実際に飲んだときの印象を少し意識してみます。

例えば、黒ビールを飲んだときに感じるコーヒーのような苦さは、ホップではなくロースト由来のものかもしれません。

また、ラガーを飲んだときの「スッと切れる感じ」は、苦味成分というよりもドライさとして感じている可能性があります。

さらに、時間が経ったビールで、苦味が丸くなったり、逆に雑味のように感じた経験があるかもしれません。

こうした違いは、苦味の種類や成分、状態によって変わっているものです。

一度、「これはどのタイプの苦さか?」と意識してみると、同じ“苦い”でも違いが見えてくるはずです。


ビール好きとして思うこと

クラフトビールを飲みに行くようになってから、「苦い=ホップ」と思うようになっていました。

しかし、

スタウトって苦いよね?」
「それはローストされた麦芽の苦さだよ」

そう言われたとき、正直よくわかりませんでした。

当時は、苦さが一つのものではなく、複数の要素からできているということを理解できていなかったのだと思います。

さらに言うと、「苦さ」そのものではなく、「苦いと感じる」という人間側の感覚も含まれていることで、余計にわからなくなっていました。

どこかモヤモヤしたまま、ビールを飲んでいた感覚があります。

僕がクラフトビールを飲み歩くようになったきっかけは、

「あのとき飲んだ一番美味しいビールを超えるビールはあるのか?」

というシンプルな疑問でした。

そこから2000種類以上のビールを飲み、さまざまな味に出会う中で、

「そもそも苦さって何なんだろう?」

という、少し大きな問いが生まれるようになりました。

今回の記事では、その問いに対するヒントとして、

ホップ由来の苦さと、それ以外の苦さを整理してきました。

そしてこの後は、さらに一歩踏み込んで、

人はどうやって苦さを感じているのか

という“感じ方”の部分にも触れていきます。

さて問題です。僕はどこへ向かっているのでしょう?(笑)

クラフトビールを数多く飲む中で、いろいろな味に触れ、感じ、考えながら、一歩一歩、足元を固めていくように飲み進めていく。

それが、自分に合った楽しみ方なのかなと思っています。

この記事を読んでくれた方は、難しいことは考えすぎず、

ほんの少しだけ「この苦さはどこから来ているんだろう」と意識してみてください。

それだけでも、今より少しだけビールが味わい深くなるはずです。


まとめ

ビールの苦味はホップだけで決まるものではありません。

・焙煎由来のビター感(ローストビター)
・ドライさとして感じる苦さ(キレ・渇き)
・余韻として続く苦さ(アフタービター)

といった要素が組み合わさって、「苦さ」として感じられます。

つまり、ビールの苦味は単一のものではなく、複数の要素が重なった結果です。

次の記事では、

「人はどうやって苦味を感じているのか」

というテーマで、味覚の仕組みそのものを整理していきます。

 ▶ 人はなぜ苦味を感じるのか?味覚の仕組みとビールの苦味の関係を解説

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関連リンク

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■ 日本のビール市場を知る
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