ビールは「発酵によって作られる飲み物」ですが、
その発酵にはいくつかの種類があることをご存じでしょうか。
前の記事(ビールの発酵とは何か?アルコールと炭酸が生まれる仕組みを解説【03-2】)では、ビールの発酵によってアルコールや炭酸、香りが生まれる仕組みを整理しました。
しかし実際には、発酵の方法や使われる酵母の違いによって、
ビールの味わいや香りは大きく変わります。
この記事では、
・上面発酵
・下面発酵
・自然発酵
という3つの発酵の違いを整理しながら、それぞれがどのような特徴を持っているのかを解説していきます。
さらに、エールやラガーといった分類との関係や、実際に飲んだときの感じ方についても見ていきます。
発酵の違いを知ることで、ビールの選び方や楽しみ方はより広がっていきます。
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上面発酵とは何か
上面発酵とは、発酵の過程で酵母が液面付近に集まり、比較的高い温度で発酵が進む方法のことを指します。
この発酵に使われる酵母は「エール酵母」と呼ばれ、主に15〜25℃程度の温度帯で活発に働きます。
上面発酵の特徴
上面発酵の最大の特徴は、香りが豊かで個性的なビールになりやすい点です。
発酵の過程で、アルコールや炭酸だけでなく、さまざまな香り成分が生成されます。
その結果、
・フルーティな香り
・華やかな香り
・スパイシーなニュアンス
といった特徴が現れやすくなります。
また、発酵温度が高めであることから、発酵のスピードも比較的早い傾向があります。
上面発酵のビールの例
上面発酵で作られるビールは、一般的に「エール」と呼ばれます。
代表的なスタイルとしては、
・ペールエール
・IPA(インディア・ペールエール)
・スタウト
・ヴァイツェン
などがあります。
これらは、香りや味わいの個性がはっきりしていることが多く、クラフトビールでよく見られるタイプです。
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下面発酵とは何か
下面発酵とは、発酵の過程で酵母が液体の下部に沈み、低温でゆっくりと発酵が進む方法のことを指します。
この発酵に使われる酵母は「ラガー酵母」と呼ばれ、主に5〜10℃程度の低い温度で働きます。
下面発酵の特徴
下面発酵の特徴は、すっきりとした味わいとクリーンな仕上がりです。
発酵温度が低いため、香り成分の生成が比較的抑えられ、
・雑味が少ない
・クリアな味わい
・キレのある後味
といった印象のビールになります。
また、発酵に時間がかかるため、その後の熟成期間も含めて、全体としてゆっくりと作られる傾向があります。
下面発酵のビールの例
下面発酵で作られるビールは、一般的に「ラガー」と呼ばれます。
代表的なスタイルとしては、
・ピルスナー
・ヘレス
・ドルトムンダー
などがあります。
日本で一般的に飲まれている大手ビールの多くも、このラガーに分類されます。
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発酵温度と酵母の関係
ビールの発酵を理解するうえで重要なのが、「発酵温度」と「酵母」の関係です。
上面発酵や下面発酵という分類はありますが、実際の醸造では、温度と酵母の組み合わせによって味わいや香りが細かく調整されています。
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発酵温度と発酵時間の関係
発酵は酵母という微生物の働きによって進みます。
酵母は生き物であるため、温度によって活動の活発さが変わります。
一般的には、
・温度が高い → 発酵が早く進む
・温度が低い → 発酵がゆっくり進む
という関係があります。
ただし、温度が高すぎると酵母に負担がかかり、逆に低すぎると活動が鈍くなるため、適切な温度管理が重要になります。
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エール酵母とラガー酵母の温度特性
ビールに使われる酵母には、それぞれ得意とする温度帯があります。
・エール酵母:比較的高めの温度で活発に働く
・ラガー酵母:低い温度で安定して働く
この違いによって、
・エール → 香りが豊かになりやすい
・ラガー → すっきりとした味わいになりやすい
といった特徴が生まれます。
ただし、これはあくまで「傾向」であり、必ずしもその温度でなければならないわけではありません。
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温度と酵母の組み合わせによる違い
実際の醸造では、酵母と温度の組み合わせによって、味わいや香りをコントロールすることができます。
例えば、
・エール酵母 × 高温 → フルーティで華やか
・エール酵母 × 低温 → 香りが抑えられ、すっきりした印象
といった違いが生まれます。
一方で、ラガー酵母を高温で使用すると、雑味が出やすくなるため、一般的には低温での発酵が選ばれます。
このように、酵母の種類だけでなく、どの温度で発酵させるかによっても、ビールの個性は大きく変わります。
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発酵温度と酵母が味を決める仕組み
ビールの味わいや香りは、
・使用する酵母の種類
・発酵させる温度
・発酵のスピード
といった要素の組み合わせによって決まります。
同じ酵母を使っても、
温度を変えることで香りの出方や味わいが変わるため、
発酵は単なる工程ではなく、
ビールの設計そのものともいえます。
そのため、上面発酵や下面発酵といった分類は、あくまで大きな枠組みであり、実際のビールはその中でさまざまに作り分けられています。
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自然発酵とは何か
自然発酵とは、特定の酵母を添加するのではなく、空気中に存在する野生の酵母や微生物によって発酵を行う方法です。
この発酵方法は、他の2つとは大きく異なる特徴を持っています。
自然発酵の特徴
自然発酵では、使用する微生物が一定ではないため、非常に複雑で個性的な味わいが生まれます。
特徴としては、
・酸味がある
・複雑な香り
・野性的な風味
といった点が挙げられます。
また、発酵や熟成に長い時間がかかることも多く、数ヶ月から数年単位で作られる場合もあります。
自然発酵のビールの例
自然発酵の代表的なビールとしては、
・ランビック
・グーズ
などがあります。
これらは、ベルギーなど特定の地域で伝統的に作られているビールです。
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エールとラガーの違いとの関係
ビールの分類としてよく知られている「エール」と「ラガー」は、
発酵の違いと密接に関係しています。
エールとは
上面発酵で作られるビールの総称です。
・香りが豊か
・味わいに個性がある
といった特徴があります。
ラガーとは
下面発酵で作られるビールの総称です。
・すっきりとした味わい
・飲みやすさ
が特徴です。
つまり、
・上面発酵=エール
・下面発酵=ラガー
という対応関係になっています。
一方で、自然発酵のビールは、この分類には当てはまらない独自のカテゴリーとして扱われることが多いです。
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実際に飲んだときの感じ方
発酵の違いは、実際に飲んだときの印象として現れます。
例えば、
・上面発酵 → 香りが立ちやすく、味わいに広がりがある
・下面発酵 → すっきりとしていて、後味が軽い
・自然発酵 → 酸味や独特の風味が感じられる
といった違いがあります。
実際に飲むときは、次のようなポイントに注目してみると違いが感じやすくなります。
・香りの出方(強いか、穏やかか)
・口に含んだときの印象(軽いか、重いか)
・後味(すっきりしているか、余韻が残るか)
例えば、エールを飲むときは香りを意識し、
ラガーを飲むときはキレや飲みやすさを意識すると、
発酵の違いがよりはっきりと見えてきます。
こうした視点を持つことで、同じビールでも感じ方が変わり、より深く楽しむことができるようになります。
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ビール好きとして思うこと
僕がクラフトビールを飲み始めて、最初に覚えた単語は「IPA」でした。
インディア・ペールエールの略で、エールビールの一種であり、上面発酵で作られるビールです。
それまで飲んできたビールは、日本の大手ビールがほとんどでした。
また、周りの人の意見に影響されながら選んでいた部分もあったと思います。
当時の僕にとって、ビールといえば銘柄くらいしか意識していませんでした。
それが30年近く続いていた中で、クラフトビールを飲み始めると、さまざまな横文字の単語や専門的な言葉に触れるようになります。
日本の大手ビールは、長く下面発酵(ラガービール)が中心でしたが、
2026年4月時点では、「キリングッドエール」、サントリーの「東京クラフト」など、エールビールも手軽に楽しめる環境が広がってきています。
こうした中で、「エール」と「ラガー」という違いを知ることで、ビールの味や香りの方向性が見えてくるようになります。
味や香りの方向性が異なる「エール」と「ラガー」。
この2つの単語を手がかりにビールを選んでみると、これまでとは少し違った楽しみ方ができるかもしれません。
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まとめ
ビールの発酵には、
・上面発酵
・下面発酵
・自然発酵
という違いがあり、それぞれがビールの味や香りに大きく影響します。
・上面発酵 → 香り豊かで個性的
・下面発酵 → すっきりして飲みやすい
・自然発酵 → 複雑で独特な風味
また、エールとラガーの違いも、この発酵の違いによって生まれています。
発酵の違いを理解することで、ビールの味わいの背景が見えるようになり、選び方や楽しみ方が広がります。
次の記事では、ビールの酵母とは何かに焦点を当て、発酵の主体となる存在について整理していきます。
▶ ビールの発酵は他のお酒や発酵食品と何が違う?ワイン・日本酒・味噌との違いを解説【03-4】
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関連リンク
■ ビール・クラフトビールの基礎知識
▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
▶ ビールの発酵と酵母を読み解く ― 仕組み・違い・種類まで全体像を整理【03-0】
