発泡酒の誕生(1994) ― 発泡酒はなぜ生まれたのか【21-2】

発泡酒が誕生した背景やビールとの違いを表現したイメージ

日本のビール市場に生まれた新しいカテゴリー

1994年、日本のビール市場には二つの大きな変化が起こりました。

一つは、酒税法改正による「地ビール解禁」です。
この制度変更によって、小規模ブルワリーでもビールを造ることが可能になりました。

そしてもう一つの変化が、発泡酒という新しいカテゴリーの登場です。

発泡酒は、日本独特の酒税制度の中で生まれたビール系飲料でした。
この新しいカテゴリーは、その後の日本のビール市場を大きく変えることになります。

ビールと似た味わいを持ちながら、価格を抑えることができる。
発泡酒は、多くの消費者にとって魅力的な選択肢となりました。

では、なぜ発泡酒は生まれたのでしょうか。
その背景には、日本の酒税制度と市場構造が深く関係しています。


日本のビール税はなぜ高かったのか

日本では長く、ビールには高い酒税が課されてきました。

その理由の一つは、ビールが安定した税収を生む商品だったことです。

多くの人が飲む。
全国で広く販売される。

こうした特徴を持つビールは、酒税制度の中でも重要な存在でした。

そのため、日本のビール税は比較的高い水準に設定されてきました。

この税率は、ビールの販売価格にも影響します。
消費者にとってビールは、日常的に飲む酒でありながら、決して安い酒ではありませんでした。

こうした状況の中で、ビールに近い味わいを持ちながら、価格を抑えた商品を作ることはできないのか。
こうした発想が生まれていきます。


酒税制度と原料の違い

日本の酒税制度では、ビールは麦芽を主原料とする酒として定義されています。

そして酒税の税率は、原料や製法によって細かく分類されています。

ここで注目されたのが、麦芽の使用割合でした。

ビールは麦芽を多く使う酒ですが、麦芽の割合を減らすことで、税率の低いカテゴリーに分類される可能性があります。

また、麦芽以外の原料を使うことで、ビールとは別の酒類として扱われる場合もありました。

この制度の仕組みを利用することで、ビールとは異なるカテゴリーの発泡性酒類を作ることができるようになります。

こうして誕生したのが、発泡酒でした。


発泡酒という新しいカテゴリー

発泡酒とは、簡単に言えば

ビールに似た発泡性の酒類

です。

麦芽の使用量を減らす
あるいは麦芽以外の原料を使う

こうした方法によって、ビールとは異なるカテゴリーとして分類されます。

その結果、ビールよりも税率を抑えることが可能になります。

発泡酒は、日本の酒税制度の中で生まれた、新しいビール系飲料でした。


大手ビール会社の新しい商品戦略

発泡酒の登場は、大手ビール会社にとっても大きな意味を持っていました。

ビールよりも価格を抑えた商品を作ることができる。
しかし、味わいはビールに近い。

こうした商品は、多くの消費者にとって魅力的でした。

1990年代後半になると、大手ビール会社は次々と発泡酒商品を発売します。

ビールよりも手頃な価格。
しかしビールに近い飲みごたえ。

こうした特徴を持つ発泡酒は、急速に市場を拡大していきました。

消費者にとっては、新しい選択肢が増えたことになります。


日本のビール市場の変化

発泡酒の登場によって、日本のビール市場は少しずつ変化していきます。

それまでの市場は、基本的に

ビール

が中心でした。

しかし発泡酒が登場したことで、消費者は

ビール
発泡酒

という選択肢を持つようになります。

価格の違い。
味わいの違い。
ブランドの違い。

こうした要素が組み合わさり、日本のビール市場は徐々に多様化していきました。

また、発泡酒は価格競争を生み出し、市場全体の構造にも影響を与えることになります。


次の変化 ― 第三のビール

発泡酒が広がる中で、日本のビール市場にはさらに新しいカテゴリーが登場します。

それが 第三のビール(新ジャンル) と呼ばれる商品です。

第三のビールは、麦芽を使わない、あるいは発泡酒と別のアルコールを組み合わせることで生まれたビール系飲料でした。

こうして日本のビール市場は

ビール
発泡酒
第三のビール

という独特の構造を持つようになります。

日本の酒税制度は、市場の中に新しいカテゴリーを生み出し続けてきました。

次の記事では、この変化によって生まれた
ビール系飲料の多様化について見ていきます。

 ▶ ビール系飲料の多様化 ― 第三のビールが生んだ日本独自のビール市場【21-3】

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関連リンク

■ ビールの基本・味わい・歴史・市場までを体系的に整理した一覧記事
 ▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
■ 日本のビール文化を読み解く
 ▶ 日本のビール文化を読み解く ― 開国からクラフトビールまでの歴史 ―
■ 規制緩和以降の大手ビール会社
 ▶ 大手ビール会社の歴史まとめ(1994〜現在)

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