ビール系飲料の多様化 ― 第三のビールが生んだ日本独自のビール市場【21-3】

第三のビールを含むビール系飲料の多様化を表現したイメージ

ビール市場の新しい構造

1990年代後半、日本のビール市場には新しいカテゴリーが登場しました。
それが発泡酒です。

発泡酒は、日本の酒税制度の中で生まれたビール系飲料でした。
ビールよりも麦芽使用量を抑えることで税率を下げ、価格を抑えた商品として広がっていきます。

この新しいカテゴリーは、多くの消費者に受け入れられ、市場は大きく変化していきました。

しかし、この変化はそれで終わりませんでした。

発泡酒の普及は、日本のビール市場にさらに新しいカテゴリーを生み出すことになります。

それが、いわゆる第三のビール(新ジャンル)です。


発泡酒ブームと酒税の見直し

発泡酒は1990年代後半から急速に市場を拡大しました。

価格が比較的安い。
味わいもビールに近い。

こうした特徴が、多くの消費者に支持されたからです。

しかし市場が拡大するにつれて、政府は発泡酒の税率を見直すようになります。

ビールと発泡酒の税率差が大きすぎるという議論が生まれたためです。

その結果、発泡酒の税率は段階的に引き上げられていきました。

ここで起きたのが、新しい商品開発です。

ビールでもない。
発泡酒でもない。

別のビール系飲料を作るという発想が生まれました。


第三のビールの登場

こうして2000年代に登場したのが、第三のビール(新ジャンル)です。

第三のビールとは、一般的に

麦芽を使わない発泡性アルコール飲料
または
発泡酒に別のアルコールを加えた飲料

などを指します。

こうすることで、ビールでも発泡酒でもないカテゴリーとして分類され、税率を抑えることが可能になりました。

第三のビールは、発泡酒よりもさらに価格を抑えることができました。

そのため、消費者にとっては非常に魅力的な商品でした。


ビール系飲料という市場

こうして日本の市場には

ビール
発泡酒
第三のビール

という三つのカテゴリーが並ぶことになります。

この構造は、世界的に見ても非常に特徴的です。

多くの国では、ビール市場は基本的にビールが中心です。
しかし日本では、税制の影響によって

ビール系飲料

という広いカテゴリーが形成されました。

この市場では、味だけでなく、価格や税率も重要な要素となります。


大手ビール会社の戦略

ビール系飲料の多様化は、大手ビール会社の戦略にも大きく影響しました。

大手メーカーは

ビール
発泡酒
第三のビール

それぞれのカテゴリーに商品を展開していきます。

消費者の好みや価格帯に合わせて、複数の商品ラインを持つようになりました。

例えば

本格的なビール
手頃な価格の発泡酒
さらに価格を抑えた第三のビール

といった形です。

こうした商品戦略によって、大手ビール会社は市場の変化に対応していきました。


消費者の選択肢は広がった

ビール系飲料の多様化は、消費者の選択肢を大きく広げました。

かつての日本では、ビールといえば

ラガービール
一部のブランド

という比較的シンプルな市場でした。

しかし2000年代以降になると

ビール
発泡酒
第三のビール

というカテゴリーの違いに加え、ブランドや味わいの違いも増えていきます。

価格帯も幅広くなり、消費者は自分の好みに合わせて商品を選ぶことができるようになりました。


ビール文化への影響

ビール系飲料の多様化は、日本のビール文化にも影響を与えました。

価格重視の商品が増えたことで、ビール市場はより競争の激しいものになります。

一方で、ビールそのものの価値を見直す動きも生まれていきました。

味わいの違い。
原料の違い。
製法の違い。

こうした要素に注目する人も増えていきます。

この流れは、後に広がっていくクラフトビール文化ともつながっていきます。


日本独自のビール市場

ビール、発泡酒、第三のビール。

この三つのカテゴリーが共存する市場構造は、日本独自のものです。

酒税制度。
大手ビール会社の戦略。
消費者の価格意識。

こうした要素が重なり、日本のビール市場は独特の形で発展してきました。

ビール系飲料の多様化は、日本のビール文化を理解する上で欠かせない要素の一つです。


次の変化 ― 大手ビール会社とクラフトビール

2000年代後半になると、日本のビール市場にはもう一つの大きな変化が起こります。

それが、クラフトビール文化の広がりです。

地ビールブームの後、日本のクラフトビールは新しい段階へと進みました。

こうした変化の中で、大手ビール会社もクラフトビールに関わるようになります。

次の記事では、
大手ビール会社のクラフトビール参入について見ていきます。

 ▶ 大手ビール会社のクラフトビール参入 ― 日本のクラフトビール市場はどう広がったのか【21-4】

────────────────

関連リンク

■ ビールの基本・味わい・歴史・市場までを体系的に整理した一覧記事
 ▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
■ 日本のビール文化を読み解く
 ▶ 日本のビール文化を読み解く ― 開国からクラフトビールまでの歴史 ―
■ 規制緩和以降の大手ビール会社
 ▶ 大手ビール会社の歴史まとめ(1994〜現在)

────────────────