ビールの価格はなぜ高いのか ― 酒税・原価・流通から読み解くビール価格の仕組み【22-8】

ビールの価格が高くなる理由を税金や原価、流通の観点で表現したイメージ

スーパーやコンビニの売り場を見ると、ビールは他のお酒と比べて高く感じることがあります。

例えば同じ350ml缶でも、

・ビール
・チューハイ
・ストロング系缶酎ハイ

などを見比べると、ビールの方が価格が高いと感じる人も多いのではないでしょうか。

また、飲食店の飲み放題メニューでも、

「ビール付き飲み放題」
「ビールなし飲み放題」

といった形で料金が分かれていることがあります。

このような場面を見ると、

ビールは他のお酒よりも高いお酒

という印象を持つことがあります。

では、なぜビールは高く感じるのでしょうか。

その理由は単純ではなく、

・酒税制度
・原材料や製造コスト
・流通構造
・他のお酒との価格構造の違い

といった複数の要素が関係しています。

この記事では、日本のビールの価格がどのような仕組みで決まっているのかを整理していきます。


ビールが高く感じる理由

まず、ビールが「高い」と感じる理由の一つは、

他のお酒との価格構造の違い

にあります。

例えばコンビニやスーパーでは、

・ビール
・チューハイ
・ストロング系缶酎ハイ

が同じ売り場に並んでいます。

このとき、多くの場合チューハイやストロング缶の方が安く販売されています。

この価格差には、

・酒税
・原材料
・製造方法

などの違いが関係しています。


ビール価格の大きな要因「酒税」

日本のビール価格を考えるうえで、最も大きな要素の一つが酒税です。

酒税とは、お酒に対して課される税金のことで、日本では国税として課税されています。

ビールはアルコール飲料の中でも税率が比較的高く、長い間、日本のビール価格に大きく影響してきました。

例えば350mlの缶ビールには、数十円程度の酒税が含まれています。

この税金はメーカーではなく、最終的には消費者が支払う形になります。

つまり、

ビールの価格の一部は税金

ということになります。


発泡酒と第三のビールが生まれた理由

1990年代以降、日本では

・発泡酒
・第三のビール

といったビールに似た飲料が登場しました。

これらは単なる新商品というだけではなく、

酒税制度を背景に生まれた商品

でもあります。

当時の酒税制度では、

・ビール
・発泡酒
・第三のビール

のカテゴリーごとに税率が大きく異なっていました。

そのためメーカーは、

・麦芽比率を調整する
・原料を変える
・製法を変える

といった工夫を行い、税率を抑えた商品を開発しました。

この結果、発泡酒や第三のビールが市場に登場し、価格の安いビール系飲料として広く普及しました。


(参考)酒税分類としてのリキュール(発泡性)

ここで、ビールとよく比較される

・チューハイ
・ストロング系缶酎ハイ

について、酒税法上の分類を簡単に見てみます。

これらの多くは、酒税法では

リキュール(発泡性)

というカテゴリーに分類されます。

一般的なチューハイは、

・焼酎
・ウォッカなどのスピリッツ

といった蒸留酒をベースに、

・炭酸
・果汁
・香料

などを加えて作られています。

つまり、ビールのような「醸造酒」ではなく、

蒸留酒ベースの炭酸アルコール飲料

という位置づけになります。

酒税の面でも違いがあります。

350ml缶のお酒に含まれる酒税の目安を比べると、おおよそ次のようになります。

ビール
約50円前後

チューハイ(リキュール)
約30円前後

つまり、税金だけでも

20円程度の差

が生まれることになります。

さらに、ストロング系缶酎ハイが安く作れる理由として、

製造方法の違い

もあります。

ビールは

・仕込み
・発酵
・熟成

という工程を経て作られます。

一方、チューハイやストロング缶は、

蒸留酒をベースに

・炭酸
・果汁
・香料

などを加えて作るため、製造工程が比較的シンプルです。

このため、

・製造コスト
・税金

の両方の面で価格差が生まれやすくなります。

まとめると、

チューハイやストロング系缶酎ハイの多くは、酒税法では「リキュール(発泡性)」に分類されます。
ビールの酒税が350mlあたり約50円前後なのに対し、チューハイは約30円前後となるため、税金だけでも価格差が生まれます。


原材料と製造コスト

ビールの価格には、原材料や製造コストも影響しています。

ビールの主な原料は

・麦芽
・ホップ
・水
・酵母

です。

特に麦芽はコストの高い原料であり、ビールの味わいを決める重要な要素でもあります。

また、ビールは

・仕込み
・発酵
・熟成

といった工程を経て製造されるため、製造には一定の時間が必要です。

このような製造工程や品質管理、設備なども、ビールのコストを構成する要素になります。


飲食店のビールはなぜ高いのか

飲食店でビールを注文すると、価格が高いと感じることがあります。

例えば

・中ジョッキ
・生ビール

などは、他のドリンクよりも高い価格設定になっていることが多くあります。

また、飲み放題メニューでも

「ビールあり」
「ビールなし」

で価格が分かれていることがあります。

この理由には、

・仕入れ価格
・酒税
・樽ビールの管理コスト

などが関係しています。

飲食店で提供される生ビールは、樽ビールをサーバーで管理する必要があり、

・サーバー設備
・ガス
・洗浄
・品質管理

などのコストも発生します。

そのため、飲食店ではビールの価格が他のドリンクより高く設定されることがあります。


海外と日本の価格の違い

日本のビールは海外と比べて高いと言われることがあります。

その理由の一つが、酒税です。

国によって酒税制度は異なりますが、日本のビール税は長い間比較的高い水準にありました。

また、流通構造や販売形態の違いも価格に影響しています。

例えばヨーロッパでは、地域のブルワリーで造られたビールが地元で消費されるケースも多く、日本とは市場構造が異なります。

このような制度や市場の違いも、日本と海外のビール価格の違いに影響しています。


ビール好きとして思うこと

僕はビールが好きなので、
「いかにビールを安く飲めるか」という視点で商品やお店を選んでいた時期がありました。

クラフトビールを飲み始める前は、
「ビールは安くたくさん飲めるもの」を選んでいたように思います。

例えば、お店に行けば「ビール付きの飲み放題」を選び、
いかにたくさん飲めるかを大事にしていた気がします。

缶ビールもコンビニで買うより、スーパーで買う方が安い。
「ビールと言えば一番搾りでしょ」と言っていた割に、実際には“酔うこと”が主目的だったようにも思います。

もちろん、酔って気分よくなったり、ストレス発散をしたりと、
上手に楽しく飲むのであれば、「酔うこと」が目的でもいいと思いますし、そういう楽しみ方を否定するつもりもありません。

実際にお店に行くと、サワーよりビールの方が高いことが多くあります。
スーパーでも、ストロング系のお酒とビールを比べると、価格差は一目瞭然です。

ビールだけでなく、
「お酒全般が好き」「酔えればいい」ということであれば、ビールにこだわる必要はないのかもしれません。

「ビールは高い」という感覚も、もしかすると「何を基準にお酒を選ぶのか」という価値観の違いなのかもしれません。

ただ、クラフトビールを醸造している方と話をしたり、ブリューパブに飲みに行ったりして、製造コストや造り手の考え方が見えるようになると、また違った印象を持つようになりました。

クラフトビールの小規模な醸造と比べると、
大手ビールメーカーは大規模製造による安定した品質、そして圧倒的な物流による低コスト化を実現しています。

他のお酒や海外ビールと比較すると、日本のビールが高く感じられる面もあるかもしれません。

しかし、自分が何を大切にするのか
(例えば、酔うことなのか、味わうことなのか、好きだから選ぶのか)

によって、同じビールでも価格に対する感じ方は変わるのではないかと思います。

今一度、
なぜお酒を飲むのか。なぜビールを飲むのか。

そんなことを考えてみても、面白いのかもしれません。


まとめ

ビールの価格は

・酒税制度
・原材料
・製造コスト
・流通構造
・市場環境

といった複数の要素によって決まっています。

また、チューハイなど他のお酒と比べることで、

ビールは高いお酒

という印象を持つこともあります。

しかしその背景には、日本の酒税制度やビール市場の仕組みがあります。

ビールの価格を理解することは、ビール市場そのものを理解することにもつながります。

そして日本のビール市場は、現在も制度の変化によって大きく変わろうとしています。

次の記事では、日本のビール市場に大きな影響を与える

ビール税の一本化

について整理していきます。

▶ 日本のビール市場規模 ― ビールはどれくらい飲まれているのか【22-9】

・ハイボール
・チューハイ
・クラフトビール
・ノンアルコール

など、さまざまな選択肢が広がっています。

ビールの消費量は減少していると言われることもありますが、その一方でビールの楽しみ方は広がっているとも言えるでしょう。

日本のビール文化は、
「量の時代」から「多様化の時代」へ
と変化しているのかもしれません。

────────────────

関連リンク

■ ビールの基本・味わい・歴史・市場までを体系的に整理した一覧記事
 ▶ ビール・クラフトビール基礎記事一覧
■ 日本のビール市場を知る
 ▶ 日本のビール市場を理解する ― 酒税・分類・市場構造まで一気に整理【22】

────────────────