ビールの原料として使われるモルト(麦芽)には、実はさまざまな種類があります。
クラフトビールの説明などで
- ベースモルト
- スペシャリティモルト
という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
モルトは、ビールの味の土台を作る非常に重要な原料です。
そして、モルトの種類や組み合わせによって、ビールの色や香り、風味は大きく変わります。
この記事では、ビールに使われるモルトの種類について、
・ベースモルト
・スペシャリティモルト
という2つの分類を中心に、わかりやすく整理していきます。
① モルトの種類は大きく2つ
モルトとは、穀物を発芽させて乾燥させた「麦芽」のことを指します。
ビールの場合、一般的には大麦を発芽させたもの(大麦モルト)が使われます。
ただし、ここで言う「モルトの種類」は、大麦の品種の違いというよりも、麦芽の加工方法や焙燥(ばいそう)の違いによって分類されるものです。
ビールに使われるモルトは、大きく次の2つに分けられます。
・ベースモルト
・スペシャリティモルト
ベースモルトはビールの土台を作るモルトであり、
スペシャリティモルトはビールの色や風味を調整するためのモルトです。
この2つのモルトを組み合わせることで、ビールの味わいが作られていきます。
② ベースモルトとは
ベースモルトとは、ビールの基本となるモルトです。
ビールの原料の中でも、最も多く使われるモルトであり、ビールの大部分を占めることが多いです。
ベースモルトの主な役割は次の2つです。
・ビールの糖を作る
・ビールの味の土台を作る
ビールの製造では、モルトに含まれるデンプンを糖に変え、それを酵母が発酵させることでアルコールが生まれます。
このとき重要になるのが、モルトに含まれる酵素です。
ベースモルトは、この酵素を十分に持っているため、ビールを作るうえで欠かせない原料になります。
代表的なベースモルトには、次のようなものがあります。
・ピルスナーモルト
・ペールモルト
・ミュンヘンモルト
これらのモルトは、ビールの基本的な風味を作る役割を持っています。
なお、ここで言う「ビールの味の土台」とは、麦由来の甘みや穀物の風味、そしてビールの厚み(コク)などのベースとなる部分を指しています。
こうした味わいは、いわゆる「モルト感」として表現されることもあります。
モルト感の意味やコクとの違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ モルト感とは? ビールの「コク」との違い・味の正体をわかりやすく解説
③ スペシャリティモルトとは
スペシャリティモルトとは、ビールの色や香り、風味を作るために使われるモルトです。
ベースモルトがビールの土台を作るのに対して、スペシャリティモルトはビールの個性を作るモルトと言えます。
スペシャリティモルトは焙燥(ばいそう)の方法や度合いによって、さまざまな色や風味を生み出します。
例えば次のようなモルトがあります。
・カラメルモルト
・チョコレートモルト
・ローストモルト
カラメルモルトは、甘みやカラメルのような風味を作ります。
チョコレートモルトやローストモルトは、黒ビールのような色やロースト香を生み出します。
こうしたモルトは、ベースモルトに少量加えることで、ビールの個性を調整する役割を持っています。
④ モルトは組み合わせて使われる
ビールのレシピでは、1種類のモルトだけを使うのではなく、複数のモルトを組み合わせて使うことが一般的です。
基本となるのはベースモルトです。
ベースモルトはビールの大部分を占める原料で、ビールの土台となる味わいを作ります。
ベースモルトは1種類だけで使われることもありますが、ビールの設計によっては複数のベースモルトを組み合わせることもあります。
例えば、ピルスナーモルトとミュンヘンモルトを組み合わせることで、軽さと麦の風味のバランスを調整する、といった使い方がされることもあります。
そこに、スペシャリティモルトを加えることで、色や香り、風味に個性を加えていきます。
スペシャリティモルトも、1種類だけ使う場合もあれば、複数種類を組み合わせて使うことも珍しくありません。
例えば、
・カラメルモルトで甘みや色を加える
・ローストモルトで香ばしさを加える
といった形で、異なる役割のモルトを少量ずつ組み合わせて使います。
また、モルトの種類だけでなく、それぞれのモルトをどのくらいの割合で使うかも重要です。
一般的には、ベースモルトがレシピの大部分を占め、スペシャリティモルトは数%〜数十%程度加えられることが多く、この比率の設計によってビールの味わいが変わります。
こうしたモルトの種類の組み合わせや比率は、ブルワー(醸造家)がビールの味を設計する際の重要なレシピの一部と言えます。
⑤こんなに色々ある モルトの種類
モルトは大きくベースモルトとスペシャリティモルトに分けられますが、実際には非常に多くの種類があります。
スペシャリティモルトの世界は特に奥が深く、焙燥(ばいそう)の方法や度合いによって、さまざまな風味や色が生まれます。
例えば次のようなモルトがあります。
・ウィートモルト(小麦モルト)
・ウィーンモルト
・ミュンヘンモルト
・ビスケットモルト
・ブラックモルト
・ヴィクトリーモルト
・メラノイジンモルト
これらのモルトは、それぞれ異なる色や香り、風味を持っています。
クラフトビールでは、こうしたモルトを組み合わせることでビールの個性が作られます。
同じスタイルのビールでも、モルトの設計が違えば味わいが変わることも珍しくありません。
⑥モルトの種類でビールの味はどう変わるか
モルトの種類は、ビールの味わいに大きく影響します。
また、モルトの焙燥(ばいそう)の度合いによって、ビールの色や風味は大きく変わります。
例えば、焙燥の浅いモルトを中心に使うと、淡い色で軽くクリーンなビールになります。
一方で、焙煎度の高いモルトを使うと、色が濃くなり、香ばしさやロースト感のあるビールになります。
代表的な例としては次のようなものがあります。
・ピルスナーモルト → 軽くクリーンな味
・ペールモルト → 麦の風味がしっかり
・ローストモルト → コーヒーのような香ばしさ
このように、モルトの種類や組み合わせによって、ビールの味は大きく変わります。
⑦ クラフトビールで重要な理由
クラフトビールでは、モルトの設計がビールの個性を大きく左右します。
大手ビールでは、すっきりした飲みやすさを重視したレシピが多いですが、クラフトビールではモルトの使い方にもさまざまな工夫がされています。
例えば
・モルトの種類を変える
・焙煎モルトを加える
・モルトの比率を変える
といった方法で、ビールの味わいを設計します。
ブルワー(醸造家)は、こうしたモルトの組み合わせによって、ビールの個性を作り出しています。
⑧ ビール好きとして思うこと
クラフトビールを飲み始めてから、モルトの種類として「カラメルモルト」や「チョコレートモルト」という言葉を聞くようになりました。
クラフトビールでは、比較的よく使われるスペシャリティモルトのように感じます。
もちろん、実際には他にもさまざまなモルトが使われているのだと思いますが、飲み手としてはなかなかそこまで意識する機会は多くありません。
大手ビールの良さは、どこのコンビニやスーパーに行っても、ほぼ同じ味のビールが飲めることだと思います。
同じレシピで大量生産しながら品質を安定させるというのは、企業努力の積み重ねによるものだと思います。
基本的に銘柄ごとに使われるベースモルトやスペシャリティモルトは決まっていて、常に同じ味を再現しているわけです。
一方でクラフトビールは、バッチごとに少しずつ違いが出ることもあります。
レシピ自体は決まっていても、原料や発酵の状態、醸造環境などによって微妙な違いが生まれることもあり、それが一期一会の風味につながることもあります。
ブルワーさんごとのレシピやこだわりが、ビールの個性として表れているのかもしれません。
そういえば、クラフトビールを飲みに行くと、醸造設備の近くに麻袋に入ったモルトの袋を見かけることがあります。
ちなみに、麻袋より麻袋風の紙袋(クラフト袋)のところが多いらしい。
あの袋には、どんな種類のモルトが書かれているのだろう。
そんなことを、この記事を書きながらふと思いました。
⑨まとめ
ビールに使われるモルトは、大きく次の2つに分けられます。
・ベースモルト
・スペシャリティモルト
ベースモルトはビールの土台を作る原料であり、
スペシャリティモルトはビールの色や風味を作る原料です。
クラフトビールでは、このモルトの組み合わせによってビールの個性が作られています。
モルトの種類を少し意識するだけでも、ビールの味わいの理解が深まり、ビールを楽しむ視点が広がるかもしれません。
次に読むとビール理解が深まる記事:
▶ ビールのモルトとは? ビール原料「麦芽」の役割・味への影響・雑学をまとめて解説
▶ ビールのモルト感とは? ビールの「コク」との違い・味の正体をわかりやすく解説
▶ ビールのモルトと麦芽の違いとは?意味は同じ?ビール原料の言葉をわかりやすく解説
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